センスの定義と統計学
私(福田大和)の親友が、センスの定義を「直感+経験」とした。若い頃は直感だけで生きているが、経験を積むことでセンスが磨かれる、というものである。巷でよく使われるセンスという言葉だが、こういった言葉に自分なりの定義を落とし込める友人はまさにセンスの塊である、と感心したものだ。
私自身は直感とは今までの人生で「これは良かった、これは悪かった」という閃きで、瞬時に判断できる能力で、教えられたり自分自身の考えであったり、経験も含まれていると思われる。そう、まずは「理論」「理屈」が重要であると思っている。この根本が間違っていると全てがうまくいかない。
拙書「恋する心エコー」は自分なりの理屈・理論を、質と量で経験し言語化したもので、発売されて10年たつがロングセラー(アマゾンで心臓、心エコー部門では1位をとっていてベストセラーでもある)となっている。長く愛される本がいいと思い、普遍的なことを高知の旅行記、恋愛要素、推理要素のストーリー性を持たせて書かせてもらった。その後も「心エコーがうまくなりたければ 心エコーレポートを書きなさい」も違う出版社から発売されている。現在も心臓リハビリテーションについても執筆依頼があり書いている最中である。開業医としては初の大会長を経験させてもらい、その経験も活かして書いている。
医師は教科書だけでなく、論文も読んで勉強しろ、と言われるが、その論文や研究内容の発表には統計学が使われる。持論であるが、統計学は自分で統計学を使った論文を書かないと、統計学に振り回されることになる。「境界型糖尿病があり心臓病で入院した方は5年以内に22%の方が何らかの癌に罹患している」は心臓病の原因と癌の原因が糖尿病であることが理論・理屈であり、その統計を論文にした、私なりにはイノベーショナル(革命的)な論文であると思っており、全国の循環器学会の教育講演でも「一宮きずなクリニック 福田大和医師より」として使われたことがある。また四国では初の「抗生剤の耐性化の地域性」についても論文にしている。同じ地域では同じような薬が使われているため、効果がなくなっている抗生剤があることも論文化している。初見の方でも住所がわかれば、効果がない薬剤を処方しない確率が統計的にわかる、ということである。
やはり何事にもセンスが重要で、質の良い経験を積むことで、「エッセンス(コツ)」を取得することが日常診療に役に立つため、一町医者ではあるが日々研鑽を心掛けている。
ちなみに日常生活でもセンスと統計学は役に立つ。コンパで連絡先を交換した女性とは必ず1回はデートできるが、「2回目を断られたら脈なし」である。もちろん、20代前半の頃のセンスと統計学である。
一宮きずなクリニック
院長 福田 大和