防災への取り組み

あざみの里が5つ星認定をいただきました!

平成30年3月23日に高知サンライズホテルで行われた高知県南海トラフ地震対策優良取組事業所認定制度(主催:高知県)の認定交付式に出席し岩城副知事より5つ星の認定証を交付いただきました。

「南海トラフ地震に対する取り組み方針 ☆☆☆☆☆」

「皆様は私たちの家族です」と定められている法人の基本方針に基づき日頃から地域と連携し防災対策に取り組み南海トラフ地震に備えます。

当日は県内の認定を受けた6事業所の1つとしてあざみの里も認定していただきました。認定期間は平成30年4月1日から3年間です。今回認定を受ける事ができましたが、認定を受けたことで災害対策が十分できたわけではありません。あざみの里では今後も、避難訓練や必要な物資の追加検討、福祉避難所運営の準備などいつ起こるか分からない災害に対して準備を進めていき、地域から必要とされる施設でありたいと思います。

災拠点としての取り組み
災拠点としての取り組み

福祉避難所として必要な取り組み

間城 和毅
高知県・社会福祉法人 秦ダイヤライフ福祉会 特別養護老人ホーム あざみの里 生活相談員

あざみの里と地域概要

高知県は人口約74万人、高齢化率32.8%(全国2位)です。四国南部の温暖な気候で降水量が多く、自然環境にも恵まれています。また、昔から台風銀座と呼ばれるほどに、台風の通り道で台風被害が多いところでもあります。さらに近年では南海トラフ地震が起こる確率が高まっており、県内でも対策が進められています。「特別養護老人ホーム あざみの里」は、住み慣れた地域で最期まで生活ができ、最適な医療と介護のサービスが受けられるよう、平成14年に住宅地の中に開設しました。

あざみの里があるのは、高知市の中心部から少し北にある薊野という地域です。昔から生活されている方も多いのですが、すぐ近くを高速道路が走っているので交通の便が良く、ショッピングモールもできて多くの人が往来する地域に発展しました。

歳を重ねるにしたがって一日一日を大切に楽しく、ダイヤのように輝いた人生を送っていただきたいという願いから、平成13年に社会福祉法人 秦ダイヤライフ福祉会が設立されました。当法人は現在、高齢者・障がい者福祉を含めた13事業所を展開しています。

地域に向けた取り組み

あざみの里では、地域住民に向けた地域貢献事業を積極的に行っています。

まず、地域住民にあざみの里を知っていただくために施設内に住民が集まり交流する場所をつくると、住民同士や施設職員となじみの関係ができました。そこで施設のホールなどを開放し、法人内各事業所職員が協力して地域住民を対象に介護予防教室などをはじめました(写真1)。さらに、地域の方に施設の概要説明や認知症サポーター養成講座を行う時間も少しずつつくっていきました。すると、地域の方から「介護保険について知りたい」「病気についてや、健康でいるための食事について聞きたい」といった声が上が上がるようになったのです。これらのニーズに応えるべく、職員が地域の町内会やコミュニティ、民生委員の定例会などへ出向き、会合の内容に沿った出前講座を開催しています。

町内会との防災協定

このように地域との交流を重ねる中、近所の町内会長からこんな相談がありました。「災害が起きたとき、避難先に指定されている小学校は歩いていくには遠い。もし家屋が倒壊したときは小学校まで行けないかも。自身の時は津波も怖いよね。あざみの里さんは高台で地盤も固いところにあるから、災害が起きたらまず駆け込みたいんですよ」

そこで施設長と相談したうえで、高知市の担当課へこの相談を報告し、施設に地域住民を受け入れられるタイセイを構築する話をすすめていくこととなりました。高知市も、いずれ到来するであろう南海トラフ地震対策のため、市内の施設や公共機関で災害対策を行っていたところのようでした。しかし、地域住民の避難を受け入れるという協定を特養と結んだという前例が高知市には無く、話は一向にすすみません。

そこでまずは、あざみの里周辺の四つの町内会と独自の防災協定を結びました。内容は災害が起こって避難の必要があるときは、あざみの里が受け入れるということにしました。

そして、東日本大震災後の平成23年10月。社会福祉法人としては市内初の福祉避難所協定が、高知市との間で終結されました。当時は、あざみの里近隣の住民はほとんどが福祉避難所という存在を知らず、単に十分な食事があるなど生活しやすい環境にある避難所だと思い込んでいる方もおられるほどでした。私たちは地域住民に対し、日ごろの地域に向けた取り組みや防災訓練を通して、福祉避難所とはどんな施設なのかを市の職員らと共に説明する必要がありました。

また、私たちも災害に対する知識を探るために、東日本大震災で甚大な被害を受けた地域へ足を運び、多くの方から当時のことについてお話を伺いました。その結果、地域住民に福祉避難所を知ってもらうことや、施設での防災・避難訓練を行っていく必要、行政や地域の自主防災組織、町内会などとの連携がとても大切であることを痛感しました。

福祉避難所として

高知市の担当課と相談し、福祉避難所内の地域住民の避難スペースを選定、確保し、あざみの里の福祉避難所マニュアルに入れ込むようにしました。また、毎年定期的に防災をテーマとした「ふれあい祭り」を行い、近隣の町内会へ案内しています。ふれあい祭りに盛り込んでいる内容は、主に次のようなものです。
・防災講演
・避難所スペースの見学
・近隣住民の要配慮者の把握
・炊き出し
・住民と施設職員でいっしょにグループワーク(写真3)
・限られた避難スペースへ要配慮者をトリアージ(優先順の決定)し誘導する訓練
・起震車を手配し揺れや煙の体験

住民と職員が交流することによって、住民も「災害が起きて施設で困ったことがあったら行っちゃうき、言うて(行くから、言ってね)」と、声をかけてくださいます。災害が発生した場合、私たち職員のほとんどは入居されている方のケアを優先しなければならず、避難者へのきめ細かな対応は難しいと思われます。この住民の言葉のように、地域住民の協力も得ながら避難所を運営していかなければならないのではないかと感じます。ゆくゆくは地域のなかで住民同士が協力できる体制をつくり、住民が率先して避難所運営にかかわれるようにしていければと考えています。

このような活動の成果か、平成27年8月に大型台風により高知市内に避難勧告が出た際には、実際に近隣の方が何人か自主的に避難してこられました。中にはあざみの里で2泊された家族もいらっしゃいました。あざみの里では、ふれあい祭りとは別に水害時の訓練なども行っています

社会福祉法人としての役割

住民からの相談に始まり、福祉避難所となり、地域と一体になって進めている防災訓練は、いつもの間にか地域で暮らす皆さんの安心につながってきたと思います。社会福祉法人の役割とは、このように地域と一体となり住民と共に歩んでいくことだと思っています。現在、あざみの里では、高知県が進めている「高知家統一基本ケアセミナー」に参加しています。このセミナーは、どんな状態で高知県のどこに暮らしていても、尊厳と健康、人として当たり前の生活が守れるようケアの質を保つためのものです。ケアに携わる人なら最低限知っていなければならない「基本ケア」が県内全域へ浸透することをめざしています。

今後について

あざみの里では、地域住民のほうがより良い生活が送れるような取り組みを進めています。今回紹介した活動以外にも、生活支援体制整備事業にかかる話し合いにも参加しているところです。この話し合いで当法人の地域への取り組みについて報告すると、参加者より「いろいろなことをされていることは知っていたけれど、具体的に実施されている内容までは知らなかった」という声があり、取り組みが地域に広く浸透していないということを痛感しました。

公の場で私たちの取り組みを発信する場は少なく、まだまだ聞こえていない地域のニーズを一つでも多く把握するためにも、地域の高齢者支援センターなどと連携しながら、私たちの取り組みをもっと広めていけるよう努めていきます。