すこやか通信-2024年9月号-

餃子とカクテルとジャズ

 8月23日から25日の間、全国有床診療所協議会総会に、高知県の会長として栃木県宇都宮市に赴いた。
 県庁所在地と件名が異なるのは、全国で12県だったか?まぁ、それは別として、有床診療所と言うのは意外に皆さんご存じないようだ。19床以下のベッドを有する診療所を有床診療所と言う。20床以上を病院と定義している。

 江戸時代の小石川療養所を受け継いだ有床診療所は世界でも他に例のない日本独自の伝統的な診療所だ。外来診療をしながら、急性期・慢性期・重症・軽症を問わずに受け入れる使い勝手の良い病床であると自負している。私は、自分の診ている人に責任を持ちたいと思って始めた形式だが、今後、包括診療や多死時代を迎えるにあたり、重要な役割を果たすだろうと考える。

 せっかくの機会なので行く前に宇都宮について調べた。宇都宮で有名なのは餃子とカクテルとジャズだ。餃子は、満州からの帰還者が作り方を持ち帰ったとされる。ほかの地域と違うのは中のひき肉が粗びきで美味しいものであった。カクテルはとてもフルーティーなもので、作り方にも趣向が凝らされていた。海に面していない県だからこそ広まったのだと思う。さて、ジャズは日本一の本場だと誰もが知っている。かの渡辺貞夫さん(彼の影響で私はサックスも始めました)も20歳代はここで毎日演奏していたとの事だ。折しも、ジャズフェスティバルが開かれており、私は夜な夜なジャズ喫茶に通いました。演奏する人もとても上手ですが、観客も玄人。どこに行ってもノリノリです。新鮮で、斬新な音楽に触れ身を清められる数日でした。
 3日間で、新しい有床診療所の仲間たちとおおいに語り合い、ジャズピアノのプロ・井上綾子さん(絶世の美女)ともメル友になりました。目新しいことに触れると一日がとても短いものだと痛感しましたよ。
 曲に合わせて体を躍らせていた老人曰く、年齢に関係なく、生き方のコツは「初めて」という心の張りを持つことらしい。確かに、年を取るにしたがって、一日がだらだらと長く感じるようだが、何事にも感動するようにすれば毎日が変化にとんだ有意義な時間になりそうだ。
 子どもの時に時間が早く過ぎると感じるのは、感動することが多いからだ。年を取ると、多くの事を「まぁ、そんなものだ。」と思うのが関の山で、一日をだらだらと過ごすことになってしまうのかもしれない。

 今年、私たちは、だれしも生まれて初めの年齢を生きています。今までやったことがあっても、行ったことがあっても、今の年齢でするのは初めてです。以前から時間が経って、多くの事を経験しているので、対処の仕方や感じ方もレベルアップしているはずです。以前とは違う感動を掴んでみたいものです。年を取るというのは、気力・体力・記憶力が劣っていく事と言われるが、気力だけはどうにかなるものです。
 暑い夏が終わります。「今日1日を楽しく過ごす」ことに集中してみませんか。まだ興奮が収まらない9月の福田より。