すこやか通信-2021年12月号-

ジャズとペットとリップクリーム

 ひょんな縁から、世界のトランぺッター日野皓正(てるまさ)さん(78歳)とお会いすることになった。米国在住だが、ジャズ・コンサートのために日本に滞在中である。
 彼は類ないゴルフ好きで、ぜひとも高知でゴルフをしたいと言うのである。私との対戦をご希望という事で、受けて立つことにした。

 来高の夕食は、日本食を食べて頂こうと中川先生お勧めの店で郷土料理を振る舞いました。日野さんは酒もたばこもマリファナ(?)も嗜みません。しかし、酔った以上にお話をしてくれました。お父様がタップダンスをしながらトランペットを吹いていたこと。家族のこと。20歳の時に黒人に刺激を受け、日本ではジャズは究めることが出来ないとアメリカに渡ったこと、白人女性との結婚、家族のことなど詳しく教えて頂いた。友達との写真も見せて頂いたが、あまりに有名な方ばかりで驚いた。

 料理とお話で満腹になった後、私の行きつけのバーに向かった。そこには私の音楽仲間を呼んでおりセッションをしたいと考えていたのである。記念写真を撮るために私もテナーサックスを準備していた。私が構えると、「原曲を吹いて、キー(トーン)は何」と言われた。「じゃぁ、フライミーをFで」と私も何気なく吹いてみた。すると、ドラム・ピアノ・ベースが静かに伴奏を始めてくれた。あまりに気持ちが良いので、アドリブもやってみた。何と続いて日野さんがアドリブで噛みついてきた。最初のセッションが始まったのである。楽譜を持っていなかった私は無我夢中で冷や汗ものであったが、あとは皆がカバーしてくれて、約2時間、熱烈な演奏会と化したのだ。日野さんの演奏は想像以上に情熱的で感動した。メンバーも我を忘れて、至福の時間を送れたようだ。私は仮死状態であった。

 翌日は、日野、福田、梅田、斎藤の4人で黒潮カントリーのプレー。梅田氏は現役トーナメントプロ。年に一度ご一緒させて頂いている仲である。一番ホールのティーショット。日野さん、ビューン。うまいのである。それもその筈、彼の家は、アメリカのゴルフ場の中に在って、青木功プロとよく回っているとの事だ。しかも、日本に来てからは、毎日、梅田プロに朝から晩まで習っていたらしい。とはいえ、私も少し良い所を見せて、無事ワンラウンドが終了した。プレー中の一コマをご紹介する。「福田さん、リップリップ。」そう言いながらマイホール、彼はリップクリームを塗っていた。話を聞くと紫外線や乾燥に唇が負けるといい演奏が出来ないので、常に手入れをしているのだと。さすがプロだと恐れ入った。

 プレー後、コーヒーを飲みながら、昨夜の私の演奏が気になったのか、こう言われた。「奏者は表情だよ。口の周りの表情筋を毎日鍛えなさい。良い音が出るようになるから。」その後は、毎日、口を締めて笑い顔を作る練習をしている。

 昨夜、家内と夕食を取っていると、携帯が鳴った。
「福田さん。何してる?」
日野さんの声であった。