すこやか通信-2023年6月号-

「ドイツを駆ける ~ケルン編~」

 3日目の朝、ライン川クルーズを終えた私達は、早朝から第二の目的地ケルンへと向かう。
 車の旅だ。迎えに来たのはバウアーさん。70歳位の長身の男性だ。ドイツ人の平均身長は190cmだから普通か。定年退職して、運転手をしているらしい。北海道大学に2年程留学していたとの事で、日本語もそれなりに通じる。ドイツで有名な日本人はと聞くと森鴎外とジョン万次郎と答えてくれたので大いに気に入った。
 ケルンまではアウトバーンを通って2時間半。ゆっくり、話ができた。ドイツの交通事情についてだ。アウトバーンはご存じの通り、制限速度なしの高速道路。ドイツ・オーストリア・スイスを結んでいる。180キロは当たり前。私は常にブレーキを踏み続けた状態だ。完全に金縛り状態だが、どの車もあたかもレースをしているように追い抜き合いをしている。車はほとんどがドイツ製。ベンツ・ワーゲン・アウディばかりだ。日本車は買わないのか聞いたところ、一時流行ったこともあるが、ドイツ人は強い車が好きなので、今は誰も買わないようだ。当たった時に壊れないのがいいとの事だ。確かに、ドイツには駐車場というのが無くて、どこでも停め放題。2車線分は駐車場代わりになっていて、いつ当たっても文句が言えない様子だ。飲酒運転も罰金無し。ドイツ人は水代わりに、ビールを飲むから酔わないだとか?

 命がけでケルンに着いたのは、昼前。どうしても見ておきたかったケルン大聖堂を拝むことができた。それはもう雄大で、ヨーロッパ中の人が集まったような騒ぎだ。特にステンドグラスの美しさが目を引いた。1時間や2時間では到底まわることもできない興味深さである。
 お腹が空いたので、勧められていた大聖堂の正面にあるレストランに赴いた。人気があるのか大変な行列である。並ぼうとしたところ、お待ちですからと中に連れられた。満杯の野外レストラン。手を振る女性。何と、明日会うはずの横谷和子さんがいるではないか。久しぶりの再開に抱き合って喜んだ。和子さんは7年前まで福田心臓消化器内科で介護士として働いていたスタッフだ。今はベルリンで和食料理店を経営している。サプライズで朝一番の飛行機で来てくれていたとの事、涙が出るほど嬉しかった。
 高速列車(日本の新幹線)でベルリンまで同伴してくれるというのだ。切符はあるのだが、実はどうやって乗ればいいのか途方に暮れていた私には、神の助けであった。風景も観たかったので列車を選んだことを後悔していたところだ。

 さあ、ベルリンに向かって出発。一面に広がる菜の花畑。まっきっきだ。風車も多い。美しい平野が広がる。ドイツにはほとんど山がないのだ。だが、この風景には理由があった。原子力発電を中止したドイツは、自然エネルギーの開発に重きを置いているのだ。ガソリンも使わないようにバイオ燃料を取り入れている。菜の花畑の理由も納得だ。核反対の日本はこれからどう動くのか?
 そんな事を考えていたところ、なんと、列車が止まった。新幹線がである。1時間半経過したが、動く気配なし。和子さんに聞いたところ、ドイツではよく止まることがあるらしい。こんな長時間は初めてだとか。だが、誰も慌ててない。車掌さんは乗客全員にチョコレートを配りだした。私達も宴会しましょう。彼女も大物だ。ビールを飲みだした。やけくそで私も真っ赤になるほど飲んでしまった。前のエンジンがいかれたようだ。
 すると、列車は後ろ向きに走り出した。迂回路を通ってベルリンに向かうらしい。今日中にベルリンに着くのかなぁ?日本ではありえないことだ。脂汗が出てきたが乗客は皆宴会だ。
 それでも、ドイツの旅は続く。