すこやか通信-2024年11月号-

 K・Yさん。80歳女性。高血圧で20年以上診させていただいている方だ。最初は血圧も不安定で頻繁に来院されていたが、ここ数年は安定していて2か月ごとに顔を見せてくれている。一人暮らしで、買い物以外出かけることも少なく、来院時は機関銃のように近況をお話しされニコニコされて帰られる。私も楽しみにしており、患者と言うより親しい友達になっている。そんな彼女が、最近は体がだるく、食欲も出ないとやってきた。血圧は良かったが肝機能障害が出ている。変わったことはなかったか、よくよく聞いてみるとピンとくることがあった。東京の一人娘からの贈り物だ。腰が痛い、膝が痛いと電話で話したところ、「ロコモ」というサプリメントを送って来たそうだ。毎日欠かさず飲んでいたら痛みもましになったような気がするというのだ。薬の変更もなかったので、サプリの副作用が原因だろうと思われた。心のこもった贈り物なので残念だが一時中止して頂く事にした。1週間ほどすると見違えるように元気になって来られました。
 サプリは安全なものだという先入観があるようだ。ドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る。ビタミン、栄養剤、アンチエイジング、夜間の頻尿止め、痛み止めいくつものサプリを併用している人は珍しくない。テレビの宣伝も効果的で、ついつい買ってしまうのだ。
 決して、サプリに反対ではないが、あくまで良くなったという効果は、個人的な感想である。実は、どの製品も小さな文字で副作用の事は書いてある。医者の許可ももらってくださいと書いてある。私たちにとっては大きな迷惑だ。たいていの人は、これは飲んでもいいですか?と聞いてこられる。医学上成分は良くても、他に何が入っているかも解らない。何かあれば、こちら側のせいになるからだ。医薬品として認められたものはないのだ。認められているものは、薬剤師からもらう仕組みになっている。
 とはいえ、自由に買えるものだから自分で管理する者に反対するわけではない。ただ気を付けて頂きたいのは、ビタミンだからと何種類も飲まない事だ。どれにも同じ成分が含まれている事が多く過剰摂取になりかねない。腎臓が悪い人は特にである。カルシウムやビタミンDの取り過ぎで悪化した人はかなり多い。

 神話的な話は漢方薬にもある。漢方は安全だと思っている人もかなり多い。だが、漢方はいろんな成分が入っていて気づかないうちに大病に発展することが多い。肺線維症や肝硬変、電解質異常である。特に、漢方の併用は避けたい。
 便秘くらいで、風邪くらいで、病院に行くのは煩わしい。時間がない。良く解ります。でも最低、注意書きだけは読むようにしましょう。
 自分の身は自分で守ることが大切なのです。