福田理事長のすこやか通信-2020年7月号-

「報告・連絡・相談」のほう・れん・そうは間違い?~留学経験を通じて~

 私の留学先のラボ(研究室)では日本人が2人であり、引き継ぎのために数週間3人になることもあります。

 「まじでボスの言ってることって訳わかりませんよね?」「なんでやねん、ボスの言うことはもっともやと思うけどなぁ」といった日本語の会話がなされるのはラボのルールとして、日本人的な考え、特に組織の中でどう動くか、をラボに入った時にindivdual meeting(個人面談)でボスから訓示される内容についてです(個人面談は毎日10分程度、lab meeting(全員がそろったミーティング)は週に1回1時間)。

 その訓示の内容は、「日本人はreport(報告)が最初で、discussion(相談)が最後と聞いている。これは間違っているので逆にしなさい。まずは責任者である私に、何をするにも相談しなさい、そして決定を私がして、でた結果を報告するように。理由は最初に報告がくると、問題が生じたことを解決するために相談することになって効率が悪いからだ」というものです。

 もちろん英語だったので、「言葉の壁」が高く、実践するときはセンターの中の偉い事務方に話を通すときに、強い圧力を感じ、これが「役人風」か、と最初は非常に苦労したものですが、慣れてくるとそれが普通になってきますし、ほうれんそう、の順番が逆に怖くなってきます。

 帰国後、医療や介護(企業でも)にも応用できると思い、一宮きずなクリニックではそのことを徹底するようにしています。個人で正しいと思いこみ行動し、それが責任者の意向ではないことであれば、それは組織として機能しているとはいえません。

 小さい組織ではトップが相談をいつでもすぐに聞き、それに対し決断することが「長」の最も大事な資質であり、それは大きな組織になれば直属の上司に相談し、その上司が迷えばされに上の上司に相談をスピーディーに聞け、その決定を実行して結果を報告するのが「強い」組織であると実感しました。こういった流れは、患者さんや施設利用者に非常に有益であれい、働く側を組織として守ることにもなるし、組織のコンセプト・ブランドが守られることにもなり、デメリットがありません。

 最高責任者の理念は尊重されるべきであり、その理念に理解と賛同し、行動することが大事だと思う次第です。先に相談をうけた後、でた結果についての検討をしていくことが正常な組織であると思います。「任せる」という上司からの言葉には、そういったホウレンソウの逆のことをするような意味合いが含まれている、と自然に思い行動できる組織で働いたこともあります。

 ただ日本ではそういったことは最初に言わないので、後から考えたら、です。米国では、まず最初に大事なことは言っておくという国民性、メンタリティの違いであると感じました。日本でも、「あうんの呼吸」ではなく、まず「長」が相談を聞くことを後回しにない、という姿勢を打ち出すことが重要だと思います。

 私はボスの意見に感銘をうけたので、慶應ボーイの後輩留学生には『ボスの言っていることは間違ってない』、京大の先輩留学生には『私もそう思います』とラボ内では英語縛りでしたが、日本人だけの時に日本語で答えたものでした。

一宮きずなクリニック 院長 福田大和