すこやか通信-2023年11月号-

「落ち葉の季節に思う事」

 11月1日。今月、第一号の患者さんはMさん。90歳女性。ご近所で一人暮らしをしている。息子さんは県外におり、滅多に連絡もないそうだ。ほとんど家から出ることはなく、誰とも話をすることはない。週に一度、スーパーに行って買い物をして、一日一食の生活をされている。月に一度、病院に来て私と話をするのを楽しみにしてくれている。朝一番に乗り込んできたMさんは、活弁も絶好調。天気の事・体の調子・孫の近況などを一気にまくしたてる。「お一人は寂しくないですか?」とお聞きしたところ、「自由な生活と鬱陶しい人間関係の無さがとても心地よく、一人でいるのが幸せだ。」とお答えになった。家の庭で花を育てるのが生きがいになっているらしく、花の話になると熱弁を振るわれる。息子さんには一緒に住もうと誘われるが、絶対に嫌。今の生活を楽しみたいとの事だ。先の事は考えずに今日が良ければそれでよいというのだ。最近、お話を伺った上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)の「おひとりさま」を実践されている。上野さんが「二人暮らしより一人暮らしの方が幸せを感じる事は、科学的に証明されている」と言われたことが何となく納得できた一瞬である。

 私からはMさんに、こんなお話をした。
 映画のオープニングの中で私が最も好きな場面だ。
 早朝5時、タクシーを降りてきた黒いドレスサングラスの女性が、デパートのショーウィンドーの前に立つ。ガラス越しにはマネキンの首にダイヤのネックレス。彼女は右手にパンを左手にコーヒーを持ち、一人で朝食を楽しんでいる。彼女の唯一の至福の時間だ。主役を演じるのはオードリ・ヘップバーン。
 「ティファニーで朝食を」でしょう。90歳のおばあちゃんに先を越された。幸せの感じ方はそれぞれと言いたかった私は残念ながら口を噤んだが、彼女にはきっと伝わっていたと思う。

 イギリス版ウィメンズヘルスの記事に、「幸福感の高い人の共通点 幸せを感じられる11の習慣」と言うのがあった。いつもの生活に、ほんの少し変化を加えるだけで、世界が違って見えてくるというのだ。せっかくの機会なのでご紹介しておく。
 1 意図的に楽観的でいる(ポジティブに考える)
 2 3つの優先事項を基盤にする(自分の幸せ・愛・心身の健康)
 3 これをすると必ず気分が盛り上がるという何かを持つこと
 4 自分を優先する。よい意味の我がままだ。
 5 追求花を求めて飛び回るミツバチのように)
 6 自分の事のように受け取らない(他人の悪い言葉は自分の事では無い)
 7 最悪なケースを慎重に吟味する。違う良いシナリオを考える。
 8 愛に溢れた親切。周りの人への親切が自分の原動力になる。
 9 自然も含めた良いことを自分のエネルギーと感じる。
 10 人生に感動する。喜びや悲しみを大きく表現する。
 11 情報や、メディアは自分に良い影響を与えるものだけを選ぶ。
 参考になるかどうかは解らないが、私なりに訳してみるとこんな感じでした。

 来年の朝ドラはやなせたかしになりました。
 アンパンマンのように身を切って、人の幸せを願い、小さな親切を与える人になりたいです。戦争ばかりで嫌な世界ですが、皆が幸せになる日が来るといいですね。
 ラ・シ・ド・ファ~ ソ・ラ・シ・ミ~ 秋ですね。二人暮らしの福田より。