福田理事長のすこやか通信-2019年12月号-

  早、師走。令和元年は疾風のごとく過ぎ去ろうとしている。

 この一年、相変わらず、毎日の外来診療に追われ、(幸せなことだが、)平凡な日々を重ねてきた。「オリンピックまでは元気で居よう」を合言葉に励ましあって生きている。オリンピックが終わったら何と言おうか心配しながらである。

  11月には、福田大和理事に原稿をお願いしたところ、快く引き受けていただき、思いもよらぬ高評価を頂いた事、光栄の極みでありました。

 代り映えのしない日々の繰り返しである私には、たまに遠出をする機会は貴重である。今回は「在宅医療を支える全国市民・診療所ネットワーク」理事会に東京に出かけさせていただいた。
 とても、面白い出会いがあったのでここでご紹介する。

 土曜日の昼に、一路飛行機で東京。一人でぶらぶらするのは楽しいものである。まさにお上りさんである。電車に乗るのは、苦手なので、東京駅の横にホテルを取ってもらった。どこに行く予定もなくタクシーを拾い、取りあえず銀座4丁目に向かう事にした。今回もやはり山野楽器店を訪ねていた。まず4階に行き、本を読む。良く解らないが音楽の本を手にする。ジャズの本を手にしていると一流の音楽家になったような気がして、気取ったポーズをとっている自分が恥ずかしかった。

 しかし、最終的に手にしたのは、「漫画でわかるジャズ」という本であった。情けない。

 我ながら笑ってしまうしかないと思った時である。隣に、40歳くらいであろうか、ジーパンに日本髪の小奇麗な女性が立っていた。鼻は大きめで唇の分厚い、割と背の高い女性だ。俳優の松たか子に似ているといったらいいだろうか。美人ではないが、愛嬌のある顔で好みのタイプである。私の持っている本を見てぷっと笑ったようだ。失礼な奴だと思って睨み付けてやったのだが、意に介さず「ビジネスマンのジャズ」という本を、さっさと買って帰ってしまった。その後、私は6階に移動し、楽器をゆっくり見て、この店を後にするのだが、のちにこの女性とは運命的な出会いをすることとなるのである。

 山野楽器店を後にした私は、いつも行く「ジャズクラブ銀座スウィング」に向かって歩いていた。裏どうりを歩いて6丁目に向かっていた時である。

 スナックらしい店から、お客さんが出てきた。お送りをしているのが、何と先ほど楽器店ではち合わせた彼女である。和服姿であか抜けた感じである。客の方は高級車の迎えが来ているので、どこかのお偉いさんのようだ。ジャズでもかかっている店なのかなと思って入ってみることにした。「空いていますか?」と聞いたところ、「イチゲンさんはちょっと!」と断られてしまった。「ひょっとしてここは俗にいう銀座のクラブなのか」田舎者丸出しであった。諦めようと思ったその時であった。「ああ、さっきの」覚えてくれていたようだ。「良かったらどうぞ」「はいーっ」追いかけるように店に入った。

 特に変わった作りではないが落ち着いた感じのゆっくりとしたスペースが印象的だ。

 店の中には、5~6人のお客さんと、10人ほどのホステスがいた。私は、一番端に案内された。無難だと思うウイスキーの水割りを注文した。先ほどの女性がついてくれたので、少し安心した。彼女の話によると、私がいくらかと値段を聞かなかったので案内したという事であった。銀座では値切ることはタブーらしい。少し和んだので、こう話しかけた。「ジャズが好きなんですか?」答えはこうであった。「音楽は解らないけど仕事がら知っておきたかったので・・・」仰天だ。仕事とはいえ私にもわからないような本をいきなり買うとは。さすがに銀座のホステスは違うのかと驚いた。

  前置きが長くなったが、これからが本題である。この人なら、面白い返事が返ってくるかもしれないと思いこう切り出してみた。「ここには成功を収めた人が集まるだろうが、成功する人とはどんな人だと思いますか?」すると、あっさりこう答えたのだ。

「お店に来る人を見て、こう思っています。一流になる人は皆、信頼できる人を傍においています。単に信用できる人ではありません。信用できる人と信頼できる人は全く違います。信用できる人とは過去の業績から信じて用いる人、信頼できる人は信じて用いる上に頼れる人です。」「あなたにそんな人がいれば一流になれますよ。」

  すぐさまピーンと来た。大畠本部長の顔が浮かんだ。「います」と答えようと思ったが、まだ自分には一流の自信がないので止めてしまった。

  もう一つ、こんなことも言っていた。

  「成功した人は感謝の言葉を忘れません。有難う。有り難い。この言葉を繰り返しています。有り難いとは読んで字のごとく、めったにないという事です。出会いや受けた恩に対して忘れることなく感謝し続けることです。」「お釈迦様が弟子に、人は何に生まれ変わるかわからない。人間に生まれてきたことに毎日感謝して、有り難い、滅多にないと感謝しなさいと教えたことから使われているそうです。私も見習って、有難うございますを三回言う事にしています。一度はお店から帰られるとき、二回目はお客様が帰られる途中にメール。三回目は、次に来てくれた時、先日はありがとうございましたという事にしています。」

 なるほどである。多分、この人はここのママだな。いくらかかったかはご想像にお任せします。

 今回、つまらない話ですが、有り難い出会いがあったのでご報告させていただきました。
 日々皆様に感謝いたしておりますことは、言うまでもありません。